DM710 / TAC-MATE

開店: 2020年8月8日(蜂の日)

業種: コンビニ

地区: 愛知県岡崎市

オーナーのモットー: Keep grindin’, Keep hustlin’

左:“おじいちゃん”の名で親しまれているTAC-MATE開業者の千賀氏 / 右:サイトウレオ

Text: Atsuko Tanaka / Photo: Atsuko Tanaka & TAC-MATE

岡崎の地元の人々に愛されるコンビニ、「DM710 / TAC-MATE」。その歴史は80年代に遡る。岡崎初のコンビニエンスストア「Cocostore」として1981年に誕生し、その後は時代の流れで「TAC-MATE」という名に変わり、昭和の激動の時代を走り抜けた。ちなみに「TAC-MATE」の「TAC」は宅配、「MATE」は仲間の意味。“なんでもお届けする、地域に根差す”営業スタイルだったが、2020年にサイトウレオ率いる新たなメンバーが加わり、現在は地元飲食店へのドリンクの卸しのみを対応。「DM710 / TAC-MATE」として、新たなスタイルでコンビニからヒップホップ・ストリートカルチャーを届けている。

そのレオがヒップホップに出会ったのは、中学生の時。姉の影響で、映画「Wild Style」や「Style Wars 」などを観てグラフィティにハマり、国内で最初のグラフィティマガジンの「KAZE MAGAZINE」を購入しては、海外のラッカーやノズルを買って楽しんでいた。そんな中、姉からもらったミックステープに入っていたTOKONA-X率いるM.O.S(後のM.O.S.A.D)に衝撃を受けて、リリックを書き始める。

そして10代後半の頃、兄弟や幼馴染と共にクラブでフリースタイルしてるところを、当時名古屋で最も勢いのあった(M.O.S.A.D率いる)クルー「BALLERS」のメンバーに声をかけられ、「THE BALLERS」というイベントに参加するように。チーム名も無かった彼らに付けられた名前は「毒蛇学院」。名付け親はTOKONA-Xだった。それをきっかけにBALLERSに正式加入し、ラッパーとして活動するようになる。その後は岡崎を拠点として、新たなクルー「OBP」を結成し、イベントや自主音源を作りながら活動を続けていた。そんなレオがどのようにしてコンビニの運営に関わることになったのか。

―レオさんがこの店に携わることになったきっかけについて教えていただけますか?

若い頃から仲間内は皆ヒップホップのプレイヤーだったのですが、拠点としていたクラブも廃業し、みんなの溜まり場でヒップホップカルチャーを教えてくれた「XA」というショップも店を閉じ、色んなことが重なって段々と活動が小さくなっていきました。自分も結婚して子供が生まれたり、メンバーも本業で役職が付き忙しくなってくると、疎遠になっていって。よくあるフェードアウトパターンですよね(笑)。

それは寂しいと、みんなでまた何かしたいなと漠然と考えている時に、岡崎市の地域復興課が休業状態だったTAC-MATEをクリエイター向けの場所として開放したんです。田舎だとコンビニは特にヤンキーの溜まり場みたいになってしまうんですが、ここにヤンキーじゃなくてイケてる奴らが溜まりだしたら、めちゃくちゃクールだなと思って。そこで、まずアーティストのライブペイント、スケーターの写真展示、さらに映像作品の上映会を企画して開催しました。店内にはクルーのヒップホップやグラフィティ、スケートの本、ビデオやカセットなどのコレクションを配置して、結構面白い空間になってたと思います。

TAC-MATEで初めて開催したイベントの様子

―そんな始まりだったんですね。来た方たちはどんな反応でした?

この日は特にスケーターが多かったので、ストリートな雰囲気たっぷりで(笑)。 TAC-MATEのパパさん(開業者・通称おじいちゃんの娘婿)とスケーターが呑み仲間で、レジをバーカウンターにしてワインを開けて呑みだしたり、みんなおかしな空間を目いっぱい楽しんでいました。「またやろうよ!」と皆に言っていただき、同じイベントメンバーで2回目も行って、人と場所は確実に繋がっているのを感じました。

そのイベントきっかけに、今のコンビニの基本構造が大体できあがったと思います。おじいちゃんとおばあちゃんがレジをして、その真横にはストリートの若者が酒を呑みながら自由に楽しんでいる。その状況が単純にめちゃくちゃ楽しくて、これを仲間たちと続けられたら幸せだなと思って、TAC-MATEに交渉して僕達が関わることになり、コンビニとヒップホップを融合したスタイルの店がスタートしました。

 

ーちなみに「DM710」にはどういう意味が含まれているんですか?

DM710は、TAC-MATEの中で繰り広げているプロジェクトの名称です。“DM”は文字通りダイレクトメールの意味で、“710”は7時から10時まで営業しているTAC-MATEの営業時間から名づけました。コンビニ型メディアというコンセプトの元スタートさせたので、FM81.3とか、AM1242みたいなラジオっぽい字面も意識してます。

―なるほど、まさに唯一無二なスタイルですね。店のコンセプトは?

「フラッと&フラット」。コンビニの特性を生かして、フラッと入ってきた人達にフラットにカルチャーを提供する。幼稚園生から学生、そして働く人やおじいちゃん・おばあちゃんまで老若男女問わず、普通のストリートのショップには入ってこないようなお客様も自由に出入りする状況をプラスに考えて、皆さんの日常にカルチャーを差し込んでいくことを狙っています。

 

―店自慢のアイテムはなんですか?

充実したお酒とタバコ、そして個展やポップアップを行った際のアーカイブ商品や作品。あと、「blast」「FRONT」「WOOFIN’」「LUIRE」などのヒップホップマガジンや「Juxtapoz」等のアート系マガジンのアーカイブです。加えてDM710のメンバー達の本やレコードのコレクションを大放出しています。ちなみにこの「JET」のアーカイブはメンバーがアメリカのコレクターから鞄ごと買ってきたものです。なかなか売ってくれなくて、「俺はこのJETを並べて壁紙にするのが夢なんだ!」等の想いを聞かされ、その想いごと無理くり購入してきたので、私たちは責任を持ってその夢を叶えなきゃなと思っています。

―この店ならではのユニークなセレクトの商品がたくさんありますね。ところでこのガチャには何が入ってるんですか?

コンビニオリジナルキャラクター“働き蜂のブンちゃん”のキーホルダーが入ってます。ロウブロウアーティストのJOHNNY氏にお願いして誕生しました。どれも、子供から大人まで大人気です。

蜂のキャラクターにしたのは本当に色んな思惑があるんですが、一つ説明するのであれば、愛知県の地域性も掛けています。この辺りはTOYOTAやMITSUBISHIといった車産業で成り立っていて、市民の大半がそういったシステムの中で頑張ってる働き蜂だなぁと思っていて。実はDM710のメンバーの半分以上は、正にその働き蜂なんですよ。その働き蜂がTAC-MATEに住み着いて新しい物語がスタートする。そんな想いもあって蜂のキャラクターなんです。後にブンちゃん達のライバル、熊の通称“BIG”が登場するんですが、デカいだけで、いつも蜂達に刺されて泣いている。「泣きっ面に蜂」を表現しています。これはいわば、「大きな熊=システム(大企業)」に対しての反発心の現れかな~なんて。これは今回初めて言いましたが、そんな想いをキャラクター達に詰め込んで遊んでいます。

―いいですね!では、今までに店で起きた出来事で、一番印象的なことについて教えてください。

今もローカルコンビニとして運営しているので、カルチャーに全く関係のない方々もお店に出入りします。そんな状況下で、我々がイベントを行うと大体面白い光景が生まれます。近所の小学生達がジュース片手にアーティストの作品を眺めて「すげ~」ってなってたり、中学校の生徒会長が自慢げに友達を連れてきて、お店を案内してたり、タトゥーアーティストがタトゥーを彫っている真横でおばあちゃん達が談笑していたり。そんな中でも一番印象的なことは、地域のおじいちゃんがコンビニで買った服を着てくれていることですかね。BEN DAVISのジャケットにTAC-MATEオリジナルのTシャツを着て、空き缶のデカい袋を担いで街を歩く姿を見かけた時は腰を抜かしました(笑)。

ー店付近のエリアはどんな感じですか?

ゆったりとした空気が流れつつも、近くの公園では毎週の様にマルシェやイベントが開かれたり、クリエイターの参加が多くなってきていると思います。小さい街ですが、それぞれがフックアップしながらやってるので、いい流れができてるなと感じてます。

 

―本当に、人々の温かさを感じる街だと思いました!最後に、いつかTAC-MATEさんを訪ねてみようと思っているお客さんにメッセージをお願いします。

誰でもウェルカムです。外のベンチで瓶のコーラでも飲みながらゆっくりお店を楽しんでいってください。

DM710 / TAC-MATE

Address: 愛知県岡崎市連尺通2丁目4−4

Phone: 0564239678

営業時間: 9:00〜19:00

定休日: 無し

Instagram: :@dm710_cvs_media