Text & Photo: Atsuko Tanaka

Dusty Husky in Fujisawa

―今日のファッションのポイントは?

緑と “D”って感じですね。カーハートのオーバーオールとアシックスの靴はもらったもので、Tシャツはアルバムリリースの時にマンハッタンレコードの限定で作ってもらいました。キャップは、D。とにかくDしか被りたくない。Dはデトロイトとドジャースくらいしかないんで、自分で作って。あと、色で言うと最近緑ばっかです。その日の自分の色があるって感じすけど、今は緑。

―最近好きなブランドやファッションスタイルはありますか?

カーハートと、スポーツ系は全部好きです。俺ニケって呼ばれてて、ナイキが好きだったんで、元々N.I.K.E.って名前でやってました。ここ最近靴はずっとアシックス履いてます。ジャージはナイキやアシックスだったり、フィラとか。あとダンロップもDだから好き。タイヤのメーカーだから、ここの靴履いてればステージで滑らないって勝手に考えてて(笑)。

―Dを常に探してるんですね。普段洋服はどこで買うことが多いですか?

買うことはほとんどないすね。あるとしても、地元のオフハウスとか、ブックオフの横にあるような店で、ジャージ上下で800円とか。よれたTシャツとかは買うことないから、Tシャツはもらうか作るかで。

―買わないのは服にお金を使いたくないから?

だったらレコードに使いたいっていうのはあるすけど、新品でよっぽどじゃないと金落とさなくなってる。欲しいものないんすよね。カーハートは欲しいけどもらえちゃうから。あとは大体全部自分らで作れるし。

 

―ファッションスタイルを参考にしている人やサイト、アプリなどはありますか?

具体的に“こいつが着てるこれ”とかを追ったことはないけど、入りは90’sヒップホップなんで、例えばRedmanとかのPVに出て来る地元の仲間の端の"こいつが着てるこれ"とかをサンプリングして自分達で作ったりはしてたかな。ブランドだと、FUBUとかECKOとか、その辺が好きっすね。とにかく今の時代の人が着ていなさそうなやつがいい、被りたくないんで。

―世界で一番オシャレな人が多いと思う街は?

ニューヨークっすね。日本でノーブランドを買うことはまずないけど、ニューヨークに行った時は、逆にノーブランドの、金持ってない人たちが行くような服屋で服買ってました。スリーブのないジャケットとか。サイジング込みで、むしろそっちの方がいいなって。

 

―ファッション・ビューティーで欠かせないアイテムは?

タイに住むようになってからは験担ぎでネックレスですかね。ライブ以外でつけることは最近ないんで今日はつけてないけど、このTシャツにも描いてあります。短い方のはDの目で、長い方はタイのプラっていう、仏教のその道を極めたお坊さんたちの像を削って作るお守り。このお坊さんは、トゥワットっていう人で、俺の中でジャズ界で言うマイルス・デイヴィス的存在。ヒップホップ界で例えるのは難しい。俺ら仲間の中で「ブーンバップ」がキーワードで、寺ってすげぇブーンバップだと思うんすよ、派生してく元があって系譜していくって意味で。ブーンバップについてはクルーのDJ FARMYが教えてくれたんすけど、彼曰く、ブーンバップは音のことじゃなくて系譜していくもの、血筋とか骨組みとか。世間が言うブーンバップとはちょっと違っていて。

―今後挑戦してみたいスタイルはありますか?

ないかな。逆におっさんになっても、サイズ落とさずにこのままずっとオーバーサイズで行きたい。藤沢ってそういう街っていうか、他の街よりサイジングがデカいと思います。サーファーは違うけど、スケーターとかラッパーとかDJはみんなデカい服が好き。

―藤沢の街について教えてください。

横乗りの街ですね。サーファーとスケーター。俺も昔はスケートしてました。中学の時に始めて、2年間神戸にいた時も継続してたんすけど、帰ってきてからはみんなのレベルが上がってたし、自分はストリートって言ってもバイクとか喧嘩とか、不良のストリートの方に行っちゃったんで、一回みんなから離れて。その後17くらいでみんなとまた音楽側で合流した感じですね。

 

―ヒップホップとの出会いは?

神戸です。神戸の時はギャングスタとかNYのとかを聴いてて、こっちに帰ってきたら今のクルーがDJやったりラップしてたりで、色々教えてもらって日本のも知って。

 

―では、今日撮影したレストラン「PARA MEXICO(パラメヒコ)」はどんな場所ですか?

1年前くらいにできた店で、音楽仲間の店って感じすね。「ガッペレス」のMVを撮った場所で、ここのボスのラスティーはガッペレスのビートを作ったんです。ちなみにここではいつもフィッシュタコスを食べます。

―それでは、ニューアルバム「Daam」についてお聞きしたいです。コンセプトやテーマなど教えてください。

「Daam」はタイ語の「Dam」にaを足してスラングにしてるんすけど、黒って意味です。俺はコロナが起きた2020年の5月までタイにいて、日本に帰ってこのアルバム作り始めたんで、いろんな感情もそうだし、作り始めて中盤くらいでDaamしかないなって思って。ちなみに全部日本で書いたのは今回が初めて。1枚目はニューヨーク、2枚目はタイ、3枚目はタイとか色々。

 

―日本で作るのはやっぱり違います?

元々DINARY DELTA FORCEって4人組のクルーでやってて、それは全部地元で作ってたんすけど、書くことないなって思ってソロの時は色々海外に行って、でもコロナで行けなくなって。その代わりに「股旅」って言葉を自分が口に出すようになってから、日本の、名前も聞いたことのないような街に必然的にLIVEで行けるようになったりしました。なので家で書いた曲は一つもないすね。運転してる時とか、どこか違う街にいる時とか、情景が動いてくれてる方がいい。

 

―制作過程で印象深い出来事は何かありますか?

DJ BUNTAがいて成り立ったアルバムなんだってところですかね。あいつはあいつで作ったんで、情景として残っているのはないけど、スクラッチもそうだし、ブレイクも全部にBUNTAが携わってるんで、彼のスキルを改めて感じたアルバムです。ちなみにBUNTAは先日もDMCの2023日本チャンピオンになりましたからね、しかも歴代最年長チャンプみたいですよ。Stillなとこがほんと格好良いし、過去に2度日本一になってますが、いよいよ世界一を獲る時が来ました。



―Dustyさんは活動を始めて何年?スタイルがぶれない感じがありますが、オリジナリティを保つために大切にしていることは?

ラップを始めてから22年ですね。でも、昔はいろんな音楽に手出して、ブレまくってたんですよ。エレクトロニカとかポエトリーやって詩の朗読の大会に出てみたり、自分は本当は何が好きなんだろうっていろんなものでラップしてるうちに、二十歳くらいで今俺らのビート作ってるNAGMATICとかDJ R-MANとかが90’sのドロドロなのを持ってきて、そこにハマって。色々やってみてそこに辿り着いた。やっとしっくりくるのが見つかったんでそれがずっと続いてる感じです。

あと、刺激は常に欲してるけど、音楽は基本レコードでしか聴かないんで、今の新しいヒップホップをそんなに追えてないんすよ。だから結局影響を受けるのって60年代から80年代くらいの、日本だったら演歌とかポップス、EUや東欧のプログレとかサイケロックとか、ロシアや韓国のドープな冷たい音とか、ブラジルのソウルだったりロックだったり、派生していってその土地で生まれたものとかが多いんで、その辺にインスパイアされるし、それらとヒップホップを混ぜて自分の中でやってる。

前回のアルバムの時はドレッドだったんすけど、今回のアルバムはドレッドを切ってめっちゃヒップホップに戻った感じがします。前のアルバムはもっとグルーヴのネタづかいというか、レコードをかけてラップしてるような感じだった。そういうディガーならではの流れみたいな、いろんな世界の音楽を吸収してのバランスは出てると思ってますね。

―スポティファイとかで聴くことはあまりないんですね。それはポリシー?

いや、車にいたらもらったCDとか聴くすけど、家だったら針落とすのが一番早いんでレコードを聴く。



―オリジナリティの源は?どんなことからインスピレーションを得ていますか?

宇宙で自分って一人しかいないし、俺の生活で生まれたものは俺しか持ってないから、その時点でオリジナルだと思ってます。サンプリングもそうだけど、すでに誰かにやられちゃったことはやらないようにしてる。俺はゼロから1を生み出すのは苦手なんすけど、何かを掛け算して作り出すのは結構得意なんで、いろんなものを見て、これってまだないなとか、そういうのは常に探してるすね。

 

―最近よく使う言葉は?

「ガッペレス」とか「ウリバマ」とか。ガッペレスが最初生まれた時は、立川のクラブでエロい感じで生まれて、みんなで何でも「ペレス」とか言ってて、最後帰る時に「ぺレース(ピース)」みたいに使ってみたりしてました。その後地元でみんなに育ててってよって言って、よく使う「ガッ」て言葉と「ペレス」を合わせたら「ガッブレスユー(God bless you)」っぽくない?って、今ではありがとうって意味で使うことが多いかな。そうしたらその年に大谷がホームラン王で1位になってて、やばいねなんて言ってたら3位にベネズエラのサルバドール・ペレスって選手が出てきて。「ペレス来た〜!」ってなって(笑)、さらにペレスが結局その年のホームラン王になったんすよ。なんでガッペレスのMVはペレスのホームランを打つ映像から始まるんです。そうやってスラングは、ノリで生まれたものを死なないようにみんなで使い続けてく感じですね。使われずに死んでいく言葉も山ほどありますけど。



―アーティストとして今後成し遂げたいこと、直近の目標は?

ラップで世界を超えること。俺の友達はダンス、スケート、D J、グラフィティで世界でメイクしてるんで。俺も、ライブを見てもらえれば世界のやつに通じると思ってます。日本全国を回らせてもらえる状況がようやくできてきたんで、これを世界に持っていきたい。やっぱりアジアの国とのリンクを深めたいです。10月に台湾、11月にタイにLIVEツアーで行くんですが、他もヨーロッパとか、英語圏外の場所でやりたい。

 

―それはなんでですか?

英語話せないやつらとの繋がりが大事だと思ってて。みんな環境が似てるというか、良くも悪くも英語話せる人たちは会話を待ってくれないし、あまり聞く耳を持ってないと思う。もちろんヒップホップはアメリカで生まれたものだし、向こうの音楽もかっこいいと思うけど、俺が繋がりたいのは英語圏外の人たち。コロナ禍で一緒に曲を作ったやつらも、コロンビア、ベネズエラ、韓国、南アフリカ、フランス、カリブ海の人たちとかで、みんなと気が合うなって思ってる。今は特に南米の人たちが惹かれあってる気がします。


―そういう人たちとはネットで繋がったんですか?

そうですね。コロンビアにDa Steez Brothazってやつらがいるんすけど、彼らとはChopped Herring Recordsっていうイギリスのレーベルからレコードを出しました。こういう海外との繋がりで言うと、この2年間が一番広がった気がする。ようやく日本を出られる状況になったし、彼らにも会いに行きたいすね。

 

―最後に、Dustyさんにとってヒップホップ とは?

生活。ヒップホップがない人生は考えられないんで。言ったらこれの被害者すね(笑)。



“Daam”

【TRACK LIST】

SIDE A ■ 1. DAAM (Prod.by GQ) 2. TOMODACHi feat. P9D (Prod. by NINO) 3. この曲はキくな (Prod & Cuts by ENDRUN) 4. SKY feat. NASTY K (Prod.by DJ LEX Cuts by DJ BUNTA) 5. (Prod.by ดี.husky) 6. iNTENTiON(Prod.by GQ)

SIDE B ■ 7. Q.R.E.A.M.(BARS) (Get Down by DJ BUNTA) 8. DOPE PUSHer PT.2 feat. BOMB WALKER/TRASH (Prod.by NAGMATIC) 9. JAiYEN feat. SHEEF THE 3RD(Prod.by) 10. 兎 to 亀(Prod.by Mitsu The Beats, Cuts by ZASSYCHEE) 11. ガッペレス(Prod.by MeS The Funk , Cuts by DJ BUNTA