Text & Photo: Atsuko Tanaka

MoMo at TUB in Nakameguro


―今日のファッションのポイントを教えてください。

ファッションポイントは、“カジュアルとフォーマルの間”です。フォーマルなプラダの靴と、カジュアルなDreのTシャツとName.のパンツの組み合わせがかわいいなと思ってます。カジュアルに1個だけ高いものを取り入れると高級感が増すと思うので、そういうスタイルをすることが多いです。

―最近好きなブランドはありますか?

このブランドだから買うとかはあまりなくて、セレクトショップとかで直感でかわいいと思ったら買う感じです。あとは、あんまり知られてないブランドが好きだったりしますね。

 

―スタイルをお手本にしている人はいますか?

ユーロピアンな感じがすごく好きです。アーティストで言うと、ジョルジャ・スミスとか、ジェネイ・アイコとか。あとはユニセックスをうまく着こなしている人とか、ピンタレスを見て参考にしてます。

 

―世界で一番オシャレな人が多いと思う街は?

パリ、ロンドンとか、ヨーロッパですね。ロンドンは前にライティングセッションで1ヶ月住んだことがあって、計4回ぐらい行ってるんですけど、いつも行く度にみんなのオシャレ度合いがすごいなと思います。ちょっと外出するっていうだけでも、上から下まですごいキメてたりしてて、そういうのは好きですね。

―今後挑戦してみたいスタイルはありますか?

みんなが着ているようなものや普通だとつまらないから、ちょっとエッジーなところを攻めたいなと思ってます。リアーナみたいに、緑のジャケットとか、ちょっとエッジが効いたアイテムを一つまとったりしてみたいです。

 

―ファッション・ビューティーで欠かせないアイテムは?

ビューティーだと、アイライナー、あとは赤とかピンク系のリップ。アーティストのMoMoの時は仕事モードでちょっと濃い感じのメイクをするんですけど、プライベートの時は結構すっぴんでいることが多くて、そうやってオン・オフを分けてます。

 

―では、今回撮影したバー「TUB」についてお聞きしたいですが、MoMoさんにとってどんな場所ですか?

仲良い友達が趣味で始めたバーで、ここで友達みんなと会うみたいな、すごいアットホームな場所です。先日新しいEPを出して、MVを出す代わりにここでライブセッションをしました。歌の良さってやっぱりライブが一番伝わるから、それを画面越しで届けられたらいいなと。バンドのギターは磯貝一樹さん、ベースはRYOZOさんで、二人ともSANABAGUN.のメンバーです。

―新しいEP “KTST”のコンセプトやテーマについてもお聞きしたいです。今回は新曲が2曲入ってる感じですか?

新曲は「ENERGY」と「HEART BEAT」、あと「Woman」は今アップルで限定配信されてますが、EPリリース後はSpotifyでも配信されます。このEPを出して、今までのチャプターに一回区切りをつけて、新しいMoMoとしてスタートしていきたいと思ってます。

 

―新しいMoMoとは?

ジャンルに縛られず、いろんな音楽に挑戦したいです。今まではR&B、ポップな感じが多かったけれど、MFSさんとのコラボ曲「Time」を作った時に、すごい楽しくって、こういう感じの音楽ももっと発信していきたいなぁと思って。それまでもヒップホップな感じの曲も作ったことはあったけど、ラッパーの人とゴリゴリにコラボっていうのはあの時が初めてで、しかも女性とやるというのですごいパワーをもらいました。

 

―MFSさんと一緒にやることになったきっかけは?

所属レーベルのワーナーのA&RがもともとBAD HOPを担当していた方で、私がラッパーとコラボしたいって相談したら、いろいろ候補をくださって。その中でやっぱり女性ラッパーがいいとなって、MFSさんとコラボすることになりました。本当にいいご縁でした。

―曲の制作過程で印象深い出来事はありますか?

プロデューサーのTaka Perryさんが仕事がめちゃくちゃ速かった。ビートも作るし、歌詞のアイデアもあって、メロも書くし、すごい多彩だなって圧倒されましたね。彼との初めてのセッションで「Time」を作ったんですけど、数時間で終わったんですよ。で、「時間余ってるし、もう1曲やる?」みたいになって「Energy」が完成しました。

 

―リリックはMoMoさんご自身で書かれたんですか?

Takaさんと一緒に書きました。私はラッパーじゃないので、英語と日本語で韻を踏むのを考えるのが少し苦手で、Takaさんは英語も日本語もできるし、こうした方がいいんじゃない?とか、いろいろ修正していただいた感じです。 

 

―「Woman」についてもお聞きしたいです。あの曲をカバーすることになったきっかけは?

アップルミュージックのキュレーターの方から、ワーナーの方に「国際女性デー」をテーマに、メジャーでもインディーでも、世界各国の活躍している歌手に洋楽のカバーをしてほしいから誰かいないかと連絡があったみたいなんです。その納品日が5日後と急だったんですけど、私がタイミング良くできたのが、多分選ばれた1つの要因だと思います。それで私が日本代表として、プレイリストに入れていただくことになりました。

 

―なるほど、ちなみに「Woman」を歌うのは、アップル側からのリクエストだったんですか?

いえ、国際女性デーというテーマに沿った洋楽を選んでほしいと言われて、いくつか選んだ中の一つが「Woman」でした。それまでラップをガチでやったことがなかったので超不安でしたけど、同じ事務所に所属しているAIさんが一緒にスタジオ入ってくれて、6、7時間ぐらいみっちり指導してくれて。一緒にお仕事するのは初めてでしたけど、超いい方で、すごく良い機会でした。

―日本を代表してあの曲が歌えるなんて、本当にすごいですね!

そういった感じで、女性のエンパワーメントみたいなことができたらいいなと思ってます。日本ってまだまだ遅れているじゃないですか。だから女性アーティストたちと、女性界隈をもっと盛り上げていきたいです。

 

ーMoMoさんは独特な世界観を持ってらっしゃって、90年代を思い起こす雰囲気もありながら今の人みたいな、私から見るとそういう印象なんですが、幼少期は教会でゴスペルを歌っていたそうですね。

はい、お父さんが、私と妹を教会に連れてってくれていたんです。初めて行ったのは小学校3年生の頃だったかな。父は私たちに英語に触れ合う機会を持ってほしかったみたいで。代官山にある教会なんですけど、アメリカ人の方達と一緒にゴスペルを歌ったりして、そこに2、3年通いました。

 

―初めてゴスペル聞いた時は結構衝撃的でした?

そうですね、みんな腹から声が出てて、声量が全然違う。それからお父さんにデスチャとかホイットニー・ヒューストンとか、洋楽を聴かせてもらうようになりました。ホイットニーは、来日した時にコンサートを観に行って、歌がすごすぎて号泣したのを覚えてます。

 

―じゃあ影響を受けたアーティストで言うと?

ホイットニー、アリサ・フランクリン、チャカ・カーン、エイミー・ワインハウス、ラナ・デル・レイもいいですね。大体いつもブラックミュージックを聴いて感動してました。

―力強い女性たちばかりですね。それで、教会に2、3年通ったあと歌のほうはどうなったんですか?

もうちょっと真剣に歌を習いたいとなって、親にお願いしてヤマハ音楽スクールに通わさせてもらいました。それからエイベックス・アーティストアカデミーに行ってもっと本気になって、広瀬香美さんが経営されてるドゥ・ドリームに通って、ご本人から直接教えてもらっていました。その後は人の紹介で 外国人の方とか、教会でピアノを弾いている方に指導を受けるようになって。

 

―MoMoさんは海外に住んでいたこともあるんですよね?

大学はアメリカの音楽学校に行きたいと思って、バークリーで歌やパフォーマンスを勉強しました。それから音楽の編集も自分でできるようになりたくなって、卒業後はLAのミュージシャンズ・インスティテュート(MI)という学校に通いました。そこでライブ時のマイキングの仕方や、ポストプロダクション、プリプロダクションなどを習って、その後日本に帰りました。

 

―帰国後はどんな活動をしていたんですか?

契約はしてなかったんですけど、エイベックスマネージメントの社長さんに気に入っていただいて、タイとかイギリスとか、海外のライティングキャンプに行くようになりました。それが今のシンガーソングライターとしての始まりですね。そのキャンプには、リアーナの曲を書いてたとかいうレベルの人たちばかりで、アジア人は私だけで、最初の頃は自分は全然ダメだって結構心折れてたんですけど、何回もキャンプに行ってるうちに慣れてきて、曲を書く自信が出て、2021年に「LazyLove」という曲をリリースしました。

―それから4年、自分の中で成長したなという感覚はありますか?

あります。最初の頃は「早く曲を完成させなきゃ!」みたいなビビってる気持ちの方が多かったですけど、今はリラックスして書けるようになったというか。他の人と一緒に進めていく中で、数をこなしていくと見えてくるものがあって、「この人はトップラインが上手いからトップラインを任せよう」とか、「この人は歌詞重視だから、私がメロを書いた方がいいな」とか、そういうのを学んだ感じですね。

 

―選ぶのは難しいと思いますが、今まで出した曲の中で一番思い入れのある曲は?

いっぱいありますけど、「LazyLove」は初めて行ったライティングセッションで書いた曲なので、一番記憶に残ってるかな。自分の経験というよりも、「50 First Dates」という映画からインスピレーションを受けて曲にしたんです。すごく覚えているのが、この曲を作った時はタイのパタヤというビーチの目の前スタジオにいて、3人で書いてたんですけど、アイデアが出てこないから、ちょっとリラックスしにビーチに行こうって、アコギだけ持って行って。私が「Oh no, マジでアイデア浮かばない」って言ったら、それいいじゃん!ってなって、「Oh no, what am I gonna do」ってイントロが生まれて。「これが曲をオーガニックに書くってことか!」って思ったのがすごい印象に残ってます。

―なるほど、曲の聞こえ方が変わりますね!今回のEPの中での好きな曲は?

全部ですけど、やっぱり「ENERGY」と「Woman」は一押しかなって思います。「ENERGY」はポジティブな感じのバイブスをたくさん詰め込んで、相手との関係からもらえるパワーや熱量を歌っていて、「Woman」は女性の強さとか、女性であることの誇り、自身の存在の肯定を示していたり、堂々とした感じのパワーを与える曲かなと思っています。

 

―アーティストとして今後成し遂げたいことや、直近の目標を教えてください。

同じ事務所に所属してるAIさんのように、駆け抜け続けるアーティストでいたいし、私の曲を聴いて救われたと思ってくれる人がいたら嬉しいです。私自身小さかった頃、学校でいじめにあったり、行き場所がないと感じたりして、当時聴いた音楽にすごく救われました。なので私の曲を聴いて、1人じゃないんだって思ってくれたり、そういう人たちの心を助けられるようなアーティストになりたいです。

 

―素晴らしいです。では最後に、いつも「あなたにとってヒップホップとは?」という質問で締めくくるんですけど、MoMoさんもヒップホップから大きな影響は受けてますか?

はい。昔ダンスを習ったきっかけにもなってますし、最初の頃はデスチャとかR&B系が多かったですけど、エミネムとか2パックとかを聴くようになって。ヒップホップってすごいやさぐれたものが多いじゃないですか。当時は自分の考えはなんで周りの人とこんなに違うんだろうとか、いい子にならなきゃみたいな、コンプレックスを感じることが多かったんですよね。でも、ヒップホップの曲を聴いてると、他の人と変わっててもいいんだと思えるようになりました。周りにどう思われても、ありのままの自分でいいじゃんみたいな、個性の表現の自由というか、そういうことを与えてくれたと思います。

取材協力:TUB https://www.instagram.com/tub_tokyo/