Black Music Bar QB

開店: 2023年11月

業種: ミュージックバー

地区: 東京 恵比寿

オーナーのモットー:ブレたら終わり

Text & Photo: Atsuko Tanaka

恵比寿駅からほど近い、静かな路地にある「Black Music Bar QB」。オーナーの中野さんは三重県出身で、DJとしても活動している。

ヒップホップとの出会いは、小学3年生の頃。3歳上の姉の影響で音楽に触れ、高校生の時にターンテーブルを購入してDJを始めた。大学時代にはブレイクダンスも始め、ヒップホップカルチャーにより深くハマっていく。大学卒業後は上京して広告代理店に勤め、30歳の時に退職。バーテンダーとして働き始めた。

―バーで働く前は広告業界に勤めていたそうですが、なぜ全く違う道に進もうと思ったんですか?

もといた会社は、最初から30歳になったら辞めるって決めてたんです。大学生の頃、クラブでDJをしながらお酒も作るバイトをしていて、音が流れる場所でお酒を飲むのって、すごく楽しいなと思って。でも、クラブをやるのはちょっとしんどそうやし、いつか自分のミュージックバーを作りたいという夢を持ってました。

―ミュージックバーをやりたいと思ったきっかけには、モデルとなるようなバーがあったんですか?

はい。目黒にある「TINA」というミュージックバーが好きで、よく通ってました。27年続いている老舗で、そこのオーナーもDJをやられていて、爆音でヒップホップやR&Bを流してるんです。そこに行った時に、めちゃくちゃ楽しいな、こういう店を作ろうって思いました。

―それで30歳で会社を辞めて、バーテンダーとしての修業はどこかでされたんですか?

はい。ここからすぐ近くにある「Bar dritt(ドリット)」というところで4年間働きました。そこはミュージックバーではなく、ベストを着てお酒を作るオーセンティック寄りのバーで、ウイスキーをメインに扱ってました。自分がお店を出す時は、ウイスキーバーはほかにもたくさんあるから、ウイスキーで勝負しても仕方ない。じゃあ何が好きかなって考えたらラムだったので、ラムを専門に扱っていこうと思って、ラムの資格を取りました。

―ここには何種類のラムがあるんですか?

50種類弱だと思います。ほかのラム専門店で飲んで気になったものを入れたり、今あるものがなくなったら、次は違うものを入れてみようかなと考えたり。入れ替えながら揃えている感じですね。

―そもそも、ラムは全部で何種類くらいあるものなんですか?

どうなんですかね。世界で一番作られているお酒って、ラムなんですよ。サトウキビが採れればどこでも作れるので。南米でもアメリカでも、日本やタイでも、世界中で作られているので、死ぬほど多いんじゃないですかね。僕もまだ知らないラムがいっぱいあると思います。

―中でも、中野さんが一番好きなのは?

モーリシャスで作られている「シャマレル」というラムですね。味わいはラムの中ではすっきりしている方なんですけど、後味にドライフルーツのような甘さの余韻が残る、すごくいいラムだと思ってます。

―ラム以外にも、面白い名前のカクテルがありますね。「イルマティック・ブラッズ」とか「ドギー・クリップス」「ウータン・クラン」とか。

「イルマティック・ブラッズ」は、花椒を入れて漬け込んだオリジナルのジンを、クラマトというトマトジュースと普通のトマトジュースを半々にしたもので割った、すっきりした味わいのカクテルです。「ドギー・クリップス」は、自家製のブルーベリーウォッカに、ブルーキュラソーという青いリキュールとグレープフルーツソーダを合わせ、ブルーベリーを入れた、ちょっと甘めのカクテル。それぞれの色が赤と青なので、名前にブラッズとクリップスを付けました。あと「ウータン・クラン」は、ウーロン茶と紫蘇焼酎の鍛高譚、クランベリージュースを合わせたものなんですけど、それぞれの名前を組み合わせて「ウータン・クラン」なんです。

―ネーミングは、やはりヒップホップを意識して?

そうですね。あと、俺は『ジョジョ(ジョジョの奇妙な冒険)』も大好きなんで、ジョジョっぽいやつも作ってみたいと思って、「ダーク・アンド・ストーンフリー」っていうカクテルもあります。

―ちなみに、このお店はどうやって見つけたんですか?

修業中、ずっと物件を探していて、恵比寿では見つからなさすぎて、目黒や学大までエリアを広げて探してたんですけど、なかなかなくて。それに、こういう業態をやりたいって言うと、「音出しは難しい」とか「近所から苦情が来るから」とかって、断られることが多かったんです。この物件の話が回ってきた時に、防音さえしっかりしてくれれば音を出しても大丈夫とのことだったので、なんとか獲得できたという感じですね。

―それで2023年11月にお店をオープンされて、出だしはどうでした?

恵比寿で4年間働いていたので、近くの飲食店の方や、そこで仲良くなった方々が来てくださって、出だしは好調でした。その後、続けていく中で徐々にお客様が変わり、音楽好きな人が増えてきた印象です。みなさん、Googleマップで調べたとか、インスタを見たとか、誰かから聞いたとかで来てくださいます。

―流す音楽は、ブラックミュージックがメインなんですよね。

そうですね。基本的にはヒップホップとR&Bが中心で、ソウル、ファンク、ディスコ、レゲエも流す、という感じです。

―今、レコードは何枚くらいあるんですか? 中野さんが昔から集めてきたものなんですよね。中でも、思い出のあるレコードはありますか?

今、全部で多分1400〜1500枚くらいあると思います。思い出があるのは、NINEというアーティストの「MAKE OR TAKE」かな。僕がヒップホップで一番好きな曲を聞かれたら、間違いなくこれと答えます。そんなに有名な曲ではないと思うんですけど、僕のDJの師匠で、ダンスも教えていた方がこの曲をめちゃくちゃ好きで、踊る時にかけることが多かったんですよ。音と動きが合わさって、すごくかっこよくて、思い出に残ってます。自分がDJをする時にも死ぬほどかけて、僕らの仲間内では、これをかければみんなオッケーみたいな曲でした。

―これまでにお店で起きたことで、印象に残っている出来事はありますか?

うちの下にある「Bar TRENCH(トレンチ)」さんがアジアのベストバー50に入って、海外のガイドブックにも載っているので、海外のお客様がすごく多いんです。僕はトレンチの方とすごく仲良くさせてもらっているのもあって、2軒目に行く店として、「ヒップホップとかが好きだったら、上に行ってみたら」って、うちを紹介してくれて。海外の方ってすごくわかりやすくて、好きなジャンルだったり、好きな音が流れていたりすると長居するけど、そうでなければ1杯だけ飲んで帰っていく、みたいな感じなんですよね。ヒップホップやR&Bが好きな人たちは、えらく気に入ってくれて、「来年もまた旅行で来るから、その時も来るね」みたいなことを言ってくれるんです。まあ、多分来ないだろうと思いながら聞いてるんですけど、律儀に本当に来てくれて。「1年ぶりや」みたいな感じで、ここら辺で踊ってます(笑)。

―音がいいし、おいしいお酒を飲んだら、踊りたくなりますよね。では、これまでやってきた中で大変だったことはありますか?

うちに来るお客様はお行儀がいい方が多くて、お酒を飲んで喧嘩するとか、酔っ払って帰れないとか、そういうのはないんですよね。みんなきれいに飲んで帰ってくれるというか、普通に来て、音楽聴いて、「イエーイ」って帰っていく、みたいなことが結構多いです。

―それはありがたいことですね。集客に苦労したということも、特にないんですか?

そうですね。もともと恵比寿で働いてたこともあったので。あと、この仕事を始めてからDJの方やダンサーの方と知り合うようになって、その方たちがクラブとかに行った時に、「恵比寿にこういうバーがあるんだよ」と、口コミで広めてくれてるみたいで。前に横浜でDJをさせてもらった時は、店主さんと喋っていて、「同業者ですか?」と聞かれて「恵比寿で音楽を流すバーをやってます」と言ったら、「QBさんですか? 恵比寿でヒップホップを聴きたかったら、そこに行けって広まってますよ」って言われて。ありがたいです。

―素晴らしい。では、これまでで一番うれしかったことは何ですか?

店で起きたことではないんですけど、僕、日本のヒップホップでいうと、THA BLUE HERBが大好きなんです。そのことをいろいろなところで言っていたら、お客様で映像制作をしている方が、「今度PVを作るのでBOSSさんに会うから、レコードを持っていったらサインをもらえるかもしれない」と言ってくれて。それでレコードをお渡ししたら、本当にBOSSさんからサインをいただけて。家宝として、ここに飾ってます。

―いつか自分のバーを開きたいと思っている人にアドバイスをするとしたら、何と言いますか?

準備段階でいうと、ちゃんとコンセプトは持った方がいいと思います。例えば、ウイスキーが好きだからといって、ウイスキーをたくさん揃えるだけではなく、何か付加価値を付けた方がいい。うちは「音楽」「ラム」、そして「ジョジョ」という三本柱があります。その中のどれかは興味がなくても、ほかのどれかは好きかもしれない。戦える武器は、いっぱいあった方がいいと思いますね。あと、物件を選ぶ上で大事なのは、不動産屋の方と仲良くなること。あまり興味がないと思った物件でも、とりあえず見に行って、不動産屋さんと会って、自分がやりたいことを話して仲良くなるのが一番なんじゃないかなと思います。

―最後に、今度初めてこのお店を訪ねてみようと思っている方に、メッセージをお願いします。

ブラックミュージックが好きなら、間違いなく心地よい空間です。何かしら音との出会いはあると思うので、音をつまみにお酒を飲んでくれたらうれしいです。


Black Music Bar QB

Address: 東京都渋谷区恵比寿西1-4-8 Breeze Ebisu 2

Phone: 090-5629-3094

営業時間、定休日:20:00〜5:00 日曜定休

Instagram: https://www.instagram.com/nakano_masao