
OVERWHELM HAMBURGER and BAR STAND
開店: 2023年11月
業種: ハンバーガー屋
地区: 東京学芸大学
オーナーのモットー: 諦めない!始めたら完了するまでやる!
Text & Photo: Atsuko Tanaka
学芸大学駅から少し離れた住宅街に佇む「OVERWHELM HAMBURGER and BAR STAND」。黒く塗られた無骨な外観からは、とてもハンバーガーショップには見えないが、中に入るとヴィンテージのシャンデリアやタイルの床、ダークピンクのバーカウンターが目に飛び込んできて、「何ここ、かっこいい」と思わず口にしたくなる。そんな独特の空間を作り上げたのが、オーナーのRikuだ。
小学生の頃からバスケットボールに打ち込み、NBA中継で流れていたヒップホップに心を奪われた。中学時代にはエミネムにハマり、彼が影響を受けた90年代のヒップホップアーティストたちのアルバムを聴き漁るようになる。
大学に進学後は「何かをやりたい」という思いはあったものの、明確な道が見つからず、卒業後は大手セキュリティ会社へ就職。そんな彼の転機は、26歳で訪れたニューヨークだった。お腹が空いてふらっと入ったハンバーガー屋で、「これだ」と思った。「ハンバーガー屋なら自分の好きなものを全部詰め込んだ店が作れるかもしれない」そう感じた彼は帰国後に会社を辞め、ハンバーガー修業を始めた。
―最初はどこの店で修行したんですか?
まず人形町のブラザーズ(BROZERS’)っていうところで働きました。めちゃくちゃ厳しくて、社長はホテル並みの接客を考える人で、髭もダメだし、人や従業員とのコミュニケーションとか料理以外の大事なことは全てここで学びました。中でも一番大変だったのは掃除ですね。でもそのおかげで、今もちゃんと掃除してます。
―確かにキッチンがすごく綺麗ですもんね。それで、その後はどうされたんですか?
ブラザーズで3年半くらい働いたあとは、中目黒のグッドバイブス(THE GOOD VIBES)で3年ほど働きました。フレンチの有名なシェフとかが働いていて、自分もまかないで、アメリカン、中華、フレンチ、イタリアンとか、いろんな料理を作りました。このやり方をすると美味しくなるとか、細かいところまで教えてくれたんで、この頃に料理のスキルがだいぶ上がったと思います。
―その後、この店をオープンされた?
そうですね。ブラザーズで働いてた時に、将来自分のお店を出す時のことを考えて、貯金でアパレルを作ったんです。「そのお店の名前はまだ秘密」という意味で、ブランド名を「Still Secret」にして、その売り上げを開店資金にしました。お店を開けたタイミングでブランド名をStill SecretからOVERWHELMに変えました。
ーちなみに場所を学芸大学に選んだ理由は?
まずは自分の家がすぐ近いからです。あと、駅近くの商店街の方は人が多いし売れるという意味では良いと思うんですけど、自分たちはヒップホップ、特にアンダーグラウンドが好きなんで、にぎやかな所より静かな方がいいなと思って、この物件が出てきた時に申し込みました。駅から徒歩7分くらいの住宅街にあるから、なかなか気づいてもらえないですが、逆に自分たちらしくひっそりとやらせてもらってて、いい感じです。
―内装もすごくオシャレですが、誰が手がけたんですか?
先輩の森下直哉さんです。今は大手のところとかもやる人で、むちゃくちゃ個性的というか、かっこいい人なんです。ずっとお願いしていて、自分のお店を開くとなったタイミングで無理に予定を空けてやってもらいました。お任せでお願いしましたけど、自分たちのことを理解して作ってくれたんで、本当に気に入ってます。
―実際に自分の店を持ってみて、どうでした?
他で働いてた時より全然楽しいというか、気持ち的にすごい楽ですね。でも、スタッフの生活を守らないといけないですし、そこは大変ですけど一番大事にしてることであります。
―お店のコンセプトは?
自分の好きなものを全て詰め込んだお店です。来てもらったら、自己紹介をしなくても伝わるようなお店を作りたかったので。
―店の人気メニューはなんですか?
「ビーフ アンド ブロッコリー チーズバーガー」。ティンバーランドのフィールドブーツ、“Beef & Broccoli” 通称 “ビーブロ”から連想を受けて作りました。
―そこから来ていたんですね!ビーブロはいつ頃からやろうと思っていたのか、また作るのに苦労したことなどあれば教えてください。
ハンバーガー屋で働き始めた最初の頃から、絶対にやろうと思ってました。ビーフアンドブロッコリーって、ニューヨークのチャイニーズフードにある、ビーフとブロッコリーをオイスターソースで炒めた料理なんですけど、それをそのままバーガーに乗せるだけじゃ面白くないんで、アレンジを加えてもっと美味しくして、お店の看板商品になるようにしたいと思って、ブロッコリーが一番美味しくなる方法を研究しました。いろいろ作ってみた結果、揚げたブロッコリーで行こうとなって、あとはソースにもこだわって、余ったブロッコリーの茎を使って美味しいソースを作ることができました。
―ブロッコリーの食感もそうですし、ソースも本当に美味しいです。ちなみにバーガーに関してのこだわりはありますか?
あります。普通のハンバーガーはひき肉を使いますけど、うちは「ハンドチョップパティ」という、筋や脂肪を丁寧に取り除いたブロック肉を、包丁で約1.5センチのサイコロ状にカットしたものをつなぎ合わせているんで、食べやすいステーキみたいな、肉々しいパティになってます。自分が色々な所で食べて一番美味しいと思ったのがこのスタイルだったんで、自分もこれで行こうと。ビーフはU.S.のブラックアンガスを使用してます。




―メニューは誰が考えているんですか?
全部自分です。でも3月末から中目黒の新店舗が始まって、考える時間がなくて、ここ1ヶ月くらいは新しいのを出せてないんですけど、いつもは大体毎月1個は限定メニューとして新しいのを出してます。
―中目のお店についてもお聞きしたいです。結構早い段階で二店舗目をオープンされましたが、ずっとやろうと考えていたんですか?
やろうと思っていたタイミングでは全然なかったんですけど、楽しそうな話が入ってきたんで、じゃあやってみようかみたいな感じで。広さはここよりちょっと狭くて、席数が20くらいなので、なんとか一人でやってます。



―では、今までについで起きた出来事で印象的な出来事について教えてください。
自分が好きな日本のヒップホップのアーティストで、今までライブを見に行ったり画面越しで見てきた人とかが食べに来てくれるのはめちゃくちゃテンション上がりますね。例えば大好きなムロさんが来てくれたこと。店にムロさんの昔のビデオを飾ってるんで、本人もすごい喜んでくれて嬉しかったです。あとは、ここをオープンした頃、ハンバーガーマニアと呼ばれてる人たちから、「この店がハンバーガー業界で一番話題になっている」と言われたことも印象に残ってます。
―そういうハンバーガーマニアの方たちとは前からお知り合いだったんですか?
そうですね。前の店で働いていた時から、ハンバーガー協会理事長とか、「あの人は全国ハンバーガー食べ歩いてる人だな」とかって見てたんで顔見知りになって。ここをオープンしたら、皆さん「おめでとうございます」って来てくれました。そういう人たちって、どこが一番美味しいとかはあんまり言わないんですけど、だいぶ褒めてもらいました。
―ハンバーガー屋って東京にいっぱいあるんですか?
去年のデータでは全国で約9250店舗なので、今は多分もっと増えていると思います。その中で今自分の店は食べログで90位くらいに入ってます。1年で100位以内に入るとこってないんですよ。
―それはすごい!では、今後の目標や挑戦してみたいことはありますか?
中目の店をもうちょっと盛り上げたいですね。店の裏に6ブランドくらいアパレルも入ってるんで、彼らとなんかできたらいいなと思ってます。あとは、うちのアパレルも今いろいろ考えてるんで、それをどんどん出していって、ハンバーガーだけじゃなく、いろんなカッコいいことをやりたいです。大体2ヶ月に一回くらい新作を出していて、来月はシャツ、Tシャツ、短パンとかを出す予定です。デザインは自分がやってます。
―デザインもRikuさんがやられているとは、センスありますね!どなたか影響を受けたブランドや人っているんですか?
間違いなくアパートメントの大橋さんですね。大学の頃からアパートメントが好きでよく行ってて、「この人かっこいいな、すごいな」って思って、自分も何かやりたいって思ったんです。その頃大橋さんは普通に店頭に立ってたんで、行くとずっと話したりして、店が終わった後はご飯に行ったりして、すごく良くしてくれました。自分がハンバーガー屋をやろうと思った時も相談に行ったし、店をオープンする報告は一番に大橋さんにしました。
―今、ご自身がお店をやる立場になって、逆にそういうふうに慕ってくる人とかは出てきてますか?
そうですね。何かをやりたいっていう人がいたら話を聞いたり、ご飯も行けるタイミングがあれば行きます。先輩がやってくれたことを、自分たちも下の子たちにやってあげないといけないなと思うし、そういうのが受け継がれていくといいなと思います。
―いいですね!最後に、今度初めてこの店を訪ねてみようと思ってるお客さんにメッセージをお願いします。
絶対に後悔はさせないし、期待以上の気持ちで退店していただけると思います。是非ご来店お待ちしております。
OVERWHELM HAMBURGER and BAR STAND
Address: 東京都目黒区中央町1丁目16-14
Phone:03-6451-2400
営業時間: 11:00〜0:00
Website: https://stillsecret.theshop.jp/
Instagram: :@overwhelm_hamburgershop